黒への欲望

   
夜の船に揺られて、帰路につく。
   
この街はなんという街だろう。
さらに揺られて、吸い込まれるような光のない空間。
   
揺られるなかでぽっかりと浮かぶ黒の闇。
闇に囲まれてますます黒く。深く、口を空けている。
息づいている。
  
終わりのない空間が口を空けて待ちうけている。
黒く塗りつぶしたい欲望。
そのことの安らぎ。
  
その向こうにあるものを掴み取る。